家庭菜園の野菜や、庭の植物の葉に、可愛らしい「てんとう虫」を見つけた時、多くの方は「アブラムシを食べてくれる益虫だ!」と微笑ましく思うことでしょう。その赤い体に黒い点々という姿は、幸運のシンボルとしても親しまれていますよね。
しかし、もしその葉が、レースのように透かし彫りにされたように食い荒らされていたとしたら…?
そのてんとう虫、もしかしたら「益虫のフリをした、たちの悪い害虫」かもしれません。
実は、私たちの身近には、益虫のナナホシテントウなどにそっくりな姿をしていながら、植物の葉を食べてしまう「テントウムシダマシ」という害虫が存在します。この”偽物”の存在を知らずに放置してしまうと、ナスやジャガイモ、トマトといった大切な野菜が、あっという間に被害にあってしまうのです。
この記事では、そんな「てんとう虫に似た害虫」の正体を明らかにし、誰でも簡単に見分けられる決定的なポイントを、写真付きのイメージで詳しく解説します。さらに、薬剤をできるだけ使わない安全な対策から、やむを得ず殺虫剤を使う場合の正しい選び方と注意点まで、あなたの菜園を守るための知識を網羅的にご紹介します。
益虫?害虫?「てんとう虫」とそのそっくりさんの違い
対策を講じる前に、まずは庭にいる虫が「味方」なのか「敵」なのかを正しく知る必要があります。両者の生態と、決定的な違いを見ていきましょう。
庭の味方!アブラムシを食べる益虫「ナナホシテントウ」

- 食性: 肉食性。アブラムシを主食とし、1匹で生涯に数百匹ものアブラムシを捕食してくれる、ガーデニングの頼もしいパートナーです。
- 特徴: 体の表面がツルツルとしていて、光沢(ツヤ)があります。 名前の通り、7つの黒い斑点(星)を持つのが代表的です。
庭の敵!野菜の葉を食べる害虫「テントウムシダマシ」

- 正体: 最もよく見られるのは「ニジュウヤホシテントウ」や「オオニジュウヤホシテントウ」です。
- 食性: 草食性。特にナス科の植物(ジャガイモ、ナス、トマト、ピーマンなど)の葉を好んで食べます。
- 特徴: 体の表面に、光沢(ツヤ)がなく、短い毛がびっしりと生えているため、ベルベット生地のようにマット(つや消し)に見えます。 斑点の数も28個と非常に多いのが特徴です。
【完全版】てんとう虫に似た害虫との確実な見分け方

見分けるポイント①「体のツヤ」が最大の違い!
- 益虫(ナナホシテントウなど): 表面に光沢があり、ツルツル、ピカピカしている。
- 害虫(テントウムシダマシ): 表面に細かい毛が生えており、光沢がなく、カサカサ、モフモフしている。
- 覚え方: 「ツヤがある”益”虫、ツヤがない”害”虫」と覚えるのがおすすめです。これが最も簡単で確実な見分け方です。
見分けるポイント②「斑点(星)の数」
- 益虫: ナナホシテントウは7個、ナミテントウは2〜19個と様々ですが、比較的数が少ないです。
- 害虫: ニジュウヤホシテントウは名前の通り28個の斑点があり、益虫に比べて明らかに数が多いです。
見分けるポイント③「食害の跡」を確認する
- もし、葉に被害が出ている場合は、その食べ跡も大きなヒントになります。
- テントウムシダマシの食害痕: 葉の表面だけを削り取るように食べるため、葉脈が網目のように残り、葉がレースのように透けた状態になります。この特徴的な食べ跡があれば、害虫のテントウムシダマシがいる可能性が非常に高いです。
てんとう虫に似た害虫(テントウムシダマシ)の対策と駆除の仕方

害虫だと特定できたら、被害が広がる前に、速やかに対策を講じましょう。安全な物理的対策から、薬剤を使用する場合の注意点までを解説します。
薬剤を使わない!基本の物理的な駆除の仕方
- 手で捕殺する: 最も確実で安全な方法です。テントウムシダマシは動きが比較的遅いので、見つけ次第、手袋をした手や割り箸などで捕まえ、駆除します。葉の裏にいることが多いので、念入りにチェックしましょう。
- 卵や幼虫を駆除する: 葉の裏に産み付けられた黄色い卵の塊や、黄色くトゲトゲした幼虫を見つけたら、その葉ごと切り取って処分するのが効果的です。
薬剤(殺虫剤)を使う場合の正しい選び方と使い方
- 薬剤使用は最終手段: まずは物理的な駆除を試し、それでも大量に発生して手に負えない場合に、薬剤の使用を検討します。
- 選び方:
- 必ず、裏面のラベルで「適用作物」にあなたの育てている野菜(ジャガイモ、ナスなど)が記載されていることを確認します。
- 「適用病害虫名」に「テントウムシダマシ類」が記載されていることを確認します。
- 自然由来の成分(除虫菊など)でできた、環境への負荷が少ないタイプから試すのがおすすめです。
- 【最重要】安全な使い方:
- 必ず商品の説明書をよく読み、希釈倍率や使用回数などの**「使用方法」を厳守**します。
- 収穫して食べるまでの期間を定めた**「収穫前日数」を必ず守ってください。**
- 散布時は、マスクや手袋を着用し、風のない日に行い、薬剤を吸い込んだり、近隣に飛散させたりしないよう注意します。
【引用】農薬取締法と、ラベル確認の重要性
- 根拠データの引用: 日本で販売されている殺虫剤(農薬)は、法律で厳しくルールが定められています。
- (例)「農林水産省は、農薬の安全な使用を徹底するため『農薬取締法』に基づき、製品のラベル表示を義務付けています。ラベルに記載された適用作物や使用方法を守らない『適用外使用』は、法律で禁止されているだけでなく、作物への悪影響(薬害)や、人の健康へのリスクを高める可能性があります。使用前には必ずラベルを確認することが、安全な園芸の第一歩です。」(出典:農林水産省ウェブサイト「農薬コーナー」より要約)
【商品紹介】てんとう虫に似た害虫対策に役立つアイテム
住友化学園芸「ベニカマイルドスプレー」などの自然派殺虫剤
- メリット: 食品成分(還元でんぷん糖化物)由来の製品など、化学合成殺虫剤に抵抗がある方でも使いやすいタイプ。収穫前日まで使える野菜も多く、使用回数の制限がないものもあります。
- デメリット: 効果が比較的穏やかで、持続期間が短い場合があります。
住友化学園芸「ベニカXファインスプレー」
病気の予防も一度に済ませたい!という方には「ベニカXファインスプレー」がおすすめです。テントウムシダマシだけでなく、トマトやナスがかかりやすい「うどんこ病」なども予防できます。薬が植物に浸透して効果が長持ちするのも、手間が省けて心強いポイントです。
どちらの製品も、ご自身の野菜(ジャガイ”モ、ナスなど)に使えるか、使用前には必ずラベルをじっくり確認してくださいね!
まとめ
今回は、益虫のてんとう虫と、それに似た害虫「テントウムシダマシ」の見分け方と、その対策について詳しく解説しました。
- てんとう虫に似た害虫の正体は、主に「テントウムシダマシ」です。
- 最大の見分け方のポイントは「体のツヤ」。益虫は「ツヤツヤ」、害虫は「ツヤなし(マット)」です。
- テントウムシダマシは、ナスやジャガイモなど、ナス科の野菜の葉をレース状に食害します。
- 基本的な対策は、見つけ次第「手で捕殺する」物理的駆除です。葉の裏の卵や幼虫も忘れずにチェックしましょう。
- 薬剤(殺虫剤)を使用する場合は、必ず「適用作物」と「適用病害虫」をラベルで確認し、使用方法と収穫前日数を厳守してください。
これからは、庭でてんとう虫に似た虫を見かけたら、すぐに「益虫だ!」と決めつけず、一呼吸おいて、その体の「ツヤ」を観察してみてください。その数秒の観察が、あなたの愛する野菜たちを、招かれざる客から守るための最も重要な一歩となります。
まずは、ご自宅の菜園の葉の裏を、じっくりと観察することから始めてみてはいかがでしょうか。
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