刈払機の2枚刃は超危険!使用が禁止される理由とは
【最重要】はじめにお読みください(免責事項)
本記事で解説する刈払機(草刈機)の「2枚刃(ツーブレード)」は、極めて危険性が高く、注意が必要な刈刃です。本記事は、その危険性を周知し、事故を未然に防ぐことを目的としており、2枚刃の使用を推奨するものでは一切ありません。
一部のオンラインストア等で現在も販売されているケースがありますが、その入手可能性は、その製品の安全性を保証するものではありません。いかなる理由があっても、2枚刃の購入や使用はご注意ください。本記事の情報を参考に作業を行った結果、発生したいかなる損害や事故についても、当サイトは一切の責任を負いかねます。
導入文
古い物置の整理や、インターネットのオークションサイトなどで、シンプルな棒状の両端に刃が付いただけの、無骨な刈払機の刃を見かけたことはありませんか?それが、通称「2枚刃(にまいば)」や「ツーブレード」と呼ばれる、旧式の刈刃です。
そのシンプルな構造から、「どんな草でも切れそうだ」「構造が単純だから丈夫そうだ」といった、誤った印象を抱いてしまうかもしれません。しかし、もしあなたがその刃を自身の刈払機に取り付けようと考えているなら、今すぐその考えを捨ててください。
結論から申し上げます。その行為は、ご自身の、そして周りの人の安全を著しく脅かす、極めて危険な行為です。
現在、この2枚刃は、そのあまりの危険性の高さから、国内の主要メーカーは製造・販売を中止しているメーカーもあり、「使用禁止」とされている地域もあります。この記事では、なぜ2枚刃がこれほどまでに危険視されるのか、その致命的な欠陥を機械力学的な視点から徹底的に解説します。さらに、「使用禁止」とする根拠を示し、安全な代替品をご紹介することで、あなたの刈払機作業を、取り返しのつかない事故から守ります。
なぜ使用禁止に?刈払機の2枚刃に潜む致命的な危険性

危険性① 制御不能な「回転ブレ」と「激しい振動」
2枚刃は、2つの刃が点対称に配置された、極めてシンプルな構造です。新品のうちは回転のバランスが取れていますが、作業中に片方の刃だけが石などに当たって摩耗したり、わずかに変形したりするだけで、回転の重心が大きくズレてしまいます。
重心がズレた刃が高速回転すると、遠心力によって機械全体が「暴れる」ように、制御不能なほど激しく振動します。これにより、まともに操作することすら困難になり、手や腕への負担はもちろん、機械の故障や思わぬ事故の原因となります。
危険性② 最も恐ろしい「破滅的なキックバック」
キックバックとは、刈刃が木や石などの硬い障害物に当たった際に、その抵抗で刈払機本体が作業者の方向へ激しく跳ね返される現象です。刈払機による事故の中で、最も重篤なものの一つです。
チップソーのような円盤状の刃の場合、障害物に当たっても衝撃がある程度分散されたり、円形の形状が衝撃を「いなす」方向に働きやすいです。しかし、棒状の2枚刃は全く異なります。片方の刃の先端が障害物に当たると、そこを支点として、もう片方の刃が「てこの原理」で、凄まじい勢いで作業者の方向へ振り回されるのです。
このキックバックは、チップソーの比ではなく、暴力的で予測・制御が不可能です。これが、2枚刃による死亡・重傷事故の最大の原因となっています。
危険性③ 刃の「破損・飛散」による事故
シンプルな鋼の板である2枚刃は、金属疲労や、障害物への繰り返しの衝突によって、根本から「ポキッ」と折れたり、割れたりしやすいという構造的な弱点も抱えています。
高速回転中に刃が破損すれば、その破片は銃弾のような速度と威力で周囲に飛散します。作業者自身はもちろん、近くにいる人や、建物の窓ガラスなどを傷つける、極めて危険な凶器と化すのです。
【公的機関の警告】刈払機の2枚刃が「使用禁止」とされる根拠
2枚刃の危険性は、個人の感想や一部の意見ではなく、国の労働安全を管轄する機関や、関連団体が、過去の多くの痛ましい事故データに基づいて公式に警告している事実です。ここでは、その「権威性」のある根拠を明確に示します。
【引用】厚生労働省の通達に見る、刈払機の安全基準
事業者(プロ)が遵守すべき安全基準は、私たちの家庭での作業の安全性を考える上でも、最も信頼できる指標となります。
(引用解説) 厚生労働省から出された、労働安全衛生規則の解釈を示す通達(平成12年2月16日 基発第66号など)では、刈払機の刈刃について、**「著しくバランスを失するおそれのあるもの」「遠心力で刃が飛散するおそれのあるもの」などは、安全性が確認されるまでの間、使用しないよう指導されています。 2枚刃は、まさにこの「著しくバランスを失しやすい」「破損・飛散のリスクが高い」という構造に該当するため、この国の通達をもって、プロの事業現場では事実上『使用禁止』と厳しく解釈・運用されています。
【注意】「まだ販売している」という事実と、その危険性の罠
ご指摘の通り、現在でも一部のオンラインストアや、小規模なメーカー、あるいは安全基準の異なる海外からの輸入品として、2枚刃が販売されているケースはございます。
しかし、これは「買える」ことと「安全に使える」ことが全くの別問題であることを、私たちは知っておかなければなりません。国内の大手有名メーカーが製造・販売していないのには、明確な理由があるのです。
「プロが、安全上の理由で絶対に使わない道具」を、知識や経験が十分でない可能性のある一般のユーザーが使うことは、さらに危険性を増大させます。安価であることなどを理由に、決して手を出してはいけません。
なぜ危険な2枚刃が、過去に刈払機で使われていたのか?

これほど危険な刃が、なぜ一昔前には当たり前のように使われていたのでしょうか。その歴史的背景を知ることで、現代の安全な道具のありがたみがより深く理解できます。
技術的な背景と、当時の「常識」
刈払機が登場した初期の時代は、現在のような高品質なチップソーを、誰もが手に入れられる価格で大量生産する技術がまだ確立されていませんでした。そのため、単純な鋼の板から比較的容易に製造できる2枚刃が、コスト面や製造面で主流となっていたのです。当時は、現代ほど安全基準に対する意識も高くなく、「道具とは、使い手が気をつけて使うものだ」という、ある意味で自己責任論的な常識がまかり通っていた時代でした。
「チップソー」の登場と、刈払機における安全性の革命
硬いタングステンカーバイドという金属のチップを、精密にバランスが取られた円盤に、一つ一つロウ付けした「チップソー」の登場は、刈払機の歴史における革命でした。
バランスに優れ、振動が少なく、衝撃に強く刃こぼれしにくい、そして切れ味も長持ちするチップソーは、2枚刃が抱えていた危険性のほとんどを克服しました。これにより、刈払機作業の安全性と効率は飛躍的に向上し、2枚刃は歴史の表舞台から姿を消していったのです。
2枚刃の代わりに使うべき、安全な刈払機の刈刃とは
危険な2枚刃をあえて使う理由は、もはや一つもありません。現代には、より安全で、性能も遥かに優れた、素晴らしい代替品が存在します。
現在の絶対的な主流「チップソー」のメリットと選び方
- メリット: バランスが良く振動が少ない、衝撃に強く刃こぼれしにくい、切れ味が長持ちするなど、安全性・性能ともに2枚刃を圧倒しています。まさしく現代のスタンダードです。
- 選び方: 刃の数(刃数)によって特性が変わります。刃数が少ない(36枚刃など)ものは、チップ一つ一つが大きく丈夫で、硬い草や笹、雑木などの切断に強いです。一方、刃数が多い(60枚刃など)ものは、衝撃にはやや弱いですが、柔らかい草を刈った際の抵抗が少なく、仕上がりがきれいになります。
障害物周りに有効な「ナイロンカッター」
壁やフェンスのキワなど、どうしても障害物に刃が当たる可能性がある場所では、チップソーでもキックバックのリスクが伴います。そうした場所では、ナイロンコードで草を刈る「ナイロンカッター」が、最も安全な選択肢となります。
【商品紹介】安全性と性能を両立した、信頼できる最新の刈刃
ツムラ(津村鋼業)などの国産高品質チップソー

- メリット: 「品質こそ全て」を掲げる日本の老舗メーカー製。刃の基盤となる鋼材の品質、チップの硬度とロウ付けの精度が非常に高く、プロの林業家からも絶大な信頼を得ています。価格は高くても、その安全性と耐久性は、まさに「命を預ける価値のある」一品です。
- デメリット: ホームセンターなどで安価に売られている海外製のチップソーに比べ、価格が2〜3倍以上します。
各社から出ている「安全性を高めた」特殊チップソー

- メリット: 石などの障害物に当たった際の衝撃を逃がすためのスリットが入っていたり、チップが飛びにくいような特殊な形状をしていたりと、安全性をさらに高める工夫が凝らされた製品もあります。初心者の方で、キックバックが特に心配な場合におすすめです。
- デメリット: 特殊な形状のため、製品によっては、通常のチップソーに比べて切れ味が若干劣る場合があります。
まとめ
今回は、刈払機の2枚刃に潜む、致命的な危険性について、その根拠と共に詳しく解説しました。
- 刈払機の「2枚刃」は、制御不能なキックバックや、刃の破損・飛散のリスクが極めて高く、なるべく使用してはならない「危険物」です。
- その危険性の高さから、厚生労働省の通達により、事実上「使用禁止」とされている地域があります。
- 一部で販売されていることがあっても、その安全性は全く保証されていません。もし物置などで古い2枚刃を見つけても、絶対に使用せず、自治体のルールに従って適切に処分してください。
- 2枚刃の代替品としては、安全性・性能ともに遥かに優れた、現代の主流である「チップソー」を使用するのが唯一の正しい選択です。
- 刈払機を使う際は、刃の種類に関わらず、必ず適切な保護具を着用し、周囲の安全を確認することが、自分自身と周りの人を守るために不可欠です。
刈払機は、私たちの作業を楽にしてくれる、非常に便利な機械です。しかし、一歩間違えれば、人生を左右するほどの大きな事故につながりかねません。
どうか、この記事で得た知識を、ご自身の安全のために役立ててください。そして、あなたの刈払機に、安全で信頼できる刈刃が取り付けられているか、今一度、確認してみてください。
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