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コードレス草刈機や芝刈機は、電源コードの煩わしさがなく、どこでも自由に作業できるのが大きなメリットです。特に広い庭や畑、道端の雑草処理などでは、取り回しのしやすさが作業効率に直結します。しかし、その便利さの要となっている「バッテリー」が劣化してくると、突然のパワーダウン、短時間での停止、作業中の充電中断といったトラブルが発生し、結果として作業効率が大幅に落ちる原因になります。
「買ったときはパワフルだったのに、1年たったらすぐ電池が切れる…」「まだ電池残ってるのに、負荷がかかると止まる…」そんなお悩みを抱える方は少なくありません。これらの多くは、日々の充電や保管の方法を見直すことで大きく改善できる可能性があります。
バッテリー寿命を知るための4つの言葉+α
バッテリーの寿命を理解するうえで欠かせない指標を以下のように表にまとめました。
用語 | 意味 | かんたん例え |
---|---|---|
サイクル寿命 | 充電→使用→充電を1回とカウント。何回繰り返せるかの目安。 | スマホを毎日フル充電したら○日で限界、のようなもの |
SOH(State of Health) | バッテリーの健康状態を0〜100%で示す | テストの得点みたいなもの。80点を切ると注意ゾーン |
DOD(Depth of Discharge) | 電池をどのくらいまで使い切ったか | ガソリンランプが点く=DODが深い |
容量保持率 | 新品時と比べてどれくらい電気をためられるか | 500mlのペットボトルが400mlしか入らないような状態 |
内部抵抗 | 電気が流れにくくなる度合い。熱も出やすくなる | 細いストローでは飲み物を吸いにくくなる感じ |
✅ 覚え方のコツ:SOH=体力チェック、DOD=どれだけエネルギーを使ったか、容量保持率=今の体力、内部抵抗=ストレスのたまり具合。と覚えるとイメージしやすい。
加えて、最近のスマート機器では「バッテリーヘルス」などの項目で、SOHやサイクル数が確認できる機種も増えてきました。草刈機や芝刈機では表示がないことが多いですが、充電器に残量ランプがある機種では、変化の傾向を記録しておくと予兆に気づきやすくなります。
次章では、こうした指標が悪化していく“原因”を詳しく見ていきます。
バッテリーが弱る5つの原因(+詳しい説明)
- 暑い日に長時間使うと内部温度が上がる
夏場の炎天下で30分以上連続使用すると、バッテリー内部は50℃以上に達することがあります。高温状態が続くとリチウムイオンの電解液が不安定になり、電池の劣化が急激に進みます。また、発熱によってプラスチックケースのゆがみやバッテリー端子の緩みが起こることもあります。 - 0%まで使い切ったり100%で放置すると傷みやすい
電池を0%まで使い切る「深放電」や、100%のまま長時間放置する「満充電状態の放置」は、どちらも電極や電解液に大きな負荷をかけるため、寿命が短くなります。バッテリーは80%くらいで使い始め、20%になったら充電するのがベストとされています。 - 草が硬くてモーターに負荷がかかると発熱する
茎が太い雑草や湿った芝生を一気に刈ると、モーターの回転数が上がり、バッテリーから大きな電流が流れます。これにより内部抵抗による発熱が強くなり、セル温度が上昇。頻繁に起きると熱劣化のリスクが高まります。 - 何か月も放置すると自然に電気が減り過放電状態になる
バッテリーは使わなくても自然放電します。半年以上放置すると、電圧が安全基準を下回る「過放電」状態になり、二度と充電できなくなる場合も。3か月ごとに状態を確認し、40〜50%程度の残量を保つようにしましょう。 - 純正と違う充電器を使うと電流が合わず劣化が早まる
安価な互換充電器の中には、充電電圧や電流を細かく制御できないものがあります。その結果、過電圧・過電流が発生し、バッテリーに無理な負担がかかることも。純正またはPSEマーク付きの信頼できる製品を使うのが安全です。
長持ちさせる充電と保管のキホン(基本+応用)

電気は 20〜80% の間で使おう
リチウムイオン電池はフル充電や完全放電の状態だと負担が大きく、劣化が早まります。使うときは「満タンでスタート、ギリギリまで使う」のではなく、8割くらいまで充電して2割残ったらやめるというサイクルを意識すると、サイクル寿命が2倍以上に延びるケースもあります。日常的に「80%で使う習慣」をつけましょう。
充電が終わったら必ずプラグを抜こう
一部の充電器は「トリクル充電」という、少しだけ電流を流し続ける方式を採用していますが、これは常に100%状態を保つことになり、バッテリーにはストレスになります。充電が完了したら速やかにプラグを抜くか、スマートプラグでタイマー設定して自動オフにすると安心です。
保管は15〜25℃の涼しい室内がベスト
暑すぎる車内、寒すぎる倉庫などでは電池の内部化学反応が不安定になり、セル劣化を早めてしまいます。直射日光の当たらない部屋、あるいは押し入れや納戸など、風通しの良い涼しい場所での保管がおすすめです。湿気が気になる方は乾燥剤も併用しましょう。
3か月以上使わないときは残量40〜50%でしまう
長期間使用しないと自然放電により過放電状態になり、二度と充電できなくなる可能性も。保管前にはバッテリーの残量を中間程度(目安40〜50%)に調整し、3か月に1回は確認して、必要があれば少しだけ追い充電してあげると安心です。
なるべく純正の急速充電器を使おう
純正品にはバッテリーのセル(小部屋)ごとの電圧を監視し、均等に充電する「セルバランサー」機能が搭載されている場合があります。この機能によって、1つのセルだけに負担が集中することを避けられ、バッテリー全体が長持ちします。また、PSEマーク付きの安全性が確認された充電器を選ぶことも大切です。
真夏にバッテリーを守る3つのテク
予備バッテリーは日陰やクーラーボックスで冷やす
真夏の炎天下に放置されたバッテリーは表面温度が50℃を超えることもあります。そこで、ソフトクーラーの中に保冷剤を敷き、その上にタオルを乗せてからバッテリーを収納すると、内部温度の上昇を防げます。実測では外気温35℃時でも、内部は25〜30℃程度に保たれたというデータもあります。持ち運び中も日陰に置くように心がけましょう。
30分ごとに休憩してバッテリーも冷ます
長時間連続で草刈機を使用すると、モーターの熱がバッテリーに伝わり、過熱によって自動停止する恐れがあります。最近のモデルではバッテリー内部が45℃を超えると安全機能が作動する設計もあるため、30分稼働したら10分ほどの休憩を挟むのが理想です。非接触温度計があると、より確実に管理できます。可能であれば予備バッテリーと交互に使い、使用中の1本は涼しい場所で冷却しておきましょう。
白いカバーを使うと直射日光の熱を反射できる
黒い機器やケースは日光を吸収して熱くなりやすいため、白や銀の素材を使うことで温度上昇を抑えることができます。具体的には、白いタオルでくるむ、または銀マット(アルミシート)で包むと、表面温度が最大15℃下がったという実測例も報告されています。現場では、段ボール箱の内側にアルミホイルを貼り付けて簡易のシェードを作るといった工夫も有効です。
これらの工夫を組み合わせれば、バッテリーの温度上昇を大幅に抑えることができ、結果として寿命を延ばすことにつながります。特に夏場の屋外作業では、バッテリーの熱対策が安全面でも重要になります。
エコモードを上手に使おう(省エネ+延命)

- 低速モードでも充分な性能を発揮:草丈が20cm未満であれば、エコモード(低速)でも十分に雑草を刈ることが可能です。特に柔らかい草や芝生エリアでは、わざわざ高速にせずとも効率よく作業ができ、バッテリーの消耗も抑えられます。低速モードにするだけで、1回の作業時間が15〜20%程度長くなることもあります。
- 自動変速機能を活用:最新の草刈機には、負荷に応じて自動的にモーターの回転数を調整する「ADT(自動ドライブテクノロジー)」や「EC制御」などの機能が備わっています。草が濃い部分や太い茎に差しかかったときだけパワーを上げてくれるため、無駄な電力消費を減らしながら、必要な場面ではしっかりとパワーを出すことができます。これにより、モーターの発熱を抑え、バッテリーの寿命延長にもつながります。
- 残量メーターはこまめに確認:最近のモデルにはLEDインジケーターなどでバッテリー残量が表示されるものが増えています。残量が1目盛り以下になった段階で交換または充電を行うことで、深放電を防止できます。深放電はバッテリー内部にダメージを与えやすく、劣化を早める原因になるため、早めの交換が大切です。特に長時間使用する際は、定期的に残量を確認する習慣をつけましょう。
また、草の種類や密度によっては、作業中に高速と低速を切り替えることも有効です。たとえば、広くて草がまばらな場所では低速、茎が太い草が混ざっている場所では一時的に高速に切り替えるなど、状況に応じた使い分けがエコモードの効果を最大限に引き出します。
まとめ

バッテリーを長く使い続けるために押さえておきたい基本のポイントは次の3つです:
これらを守ることで、バッテリーの寿命は飛躍的に伸び、結果的に交換頻度が減って経済的です。また、草刈り中に急にパワーが落ちるトラブルも減り、作業の効率や安全性も高まります。特に暑い時期や寒冷地での使用では温度管理が重要なポイントとなります。
加えて、バッテリー残量をこまめに確認することや、1〜2か月ごとの点検・軽い掃除を行うことも長寿命につながります。
今日から実践できる小さな習慣の積み重ねが、草刈機・芝刈機の快適な使用を支える大きな力になります。
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