美しい芝生を目指して、日々の手入れに励んでいらっしゃる皆様、本当にお疲れ様です。特に、芝生の健康に欠かせない「サッチング」。熱心に取り組むあまり、「なんだか芝生が薄くなった気がする…」「もしかして、やりすぎてしまったのだろうか?」と不安に感じた経験はありませんか?
実はその不安、芝生を大切に思う多くの方が一度は抱える悩みです。サッチングは芝生の通気性や水はけを良くする重要な作業ですが、その一方で、やり方やタイミングを間違えると、かえって大切な芝生を傷つけてしまう「諸刃の剣」にもなり得ます。特に「やりすぎ」は、芝生の回復力を奪い、病害虫の発生を招く原因にもなりかねません。
ご安心ください。この記事では、芝生の手入れの経験者が「サッチングのやりすぎ」で起こる問題から、芝生の種類ごとに最適な時期と頻度、そして芝生を絶対に傷めない正しいやり方のコツまで、あなたの疑問を一つひとつ丁寧に解消していきます。
この記事を最後まで読めば、もうサッチングで迷うことはありません。自信を持って効果的なお手入れができるようになり、今年こそ、誰もがうらやむような青々とした健康な芝生を手に入れることができるでしょう。
そもそも芝生のサッチングとは?やりすぎがダメな根本理由

芝生の手入れの基本として語られるサッチングですが、なぜ必要で、なぜ「やりすぎ」が問題になるのでしょうか。まずはサッチングの目的と、やりすぎが引き起こすトラブルについて、基本からしっかりとおさらいしましょう。
芝生を健やかに保つ!サッチング本来の目的
「サッチ」の正体とは?
サッチとは、芝生の根元に溜まった刈りカス、古い葉や根などが分解されずに堆積した層のことです。
この層が厚くなると、土壌への酸素や水の供給を妨げ、肥料の浸透も悪くなります。
サッチングがもたらす3つのメリット
通気性・透水性の改善: 土壌に水と空気が行き渡り、根が健康に育ちます。
病害虫の予防: サッチは病原菌や害虫の温床になりやすいため、これを取り除くことで病気のリスクを減らします。
肥料効果の最大化: 肥料が直接土壌に届くため、栄養を効率よく吸収できます。
「やりすぎ」サインを見逃さない!サッチングが芝生を傷つける仕組み
サッチングのやりすぎがNGな理由
これは危険!「やりすぎ」のサイン
作業後に、芝生よりも土の色が目立つほど地面が露出している。サッチだけでなく、緑の元気な葉や茎まで大量に取れてしまう。作業から数週間経っても、芝生が回復せず、むしろ薄い状態が続いている。
【最重要】芝生のサッチングに最適な時期とやりすぎない頻度

サッチングの効果を最大化し、失敗を防ぐために最も重要なのが「いつ、どれくらいの頻度で行うか」です。お庭の芝生の種類に合わせて、ベストなタイミングを見極めましょう。
日本芝?西洋芝?あなたの芝生に合ったサッチングの時期
- 高麗芝・野芝など「暖地型芝生」の最適な時期
- ベストシーズン:春(4月~6月上旬)と秋(9月)
- 理由:芝生の生育が最も旺盛になる時期であり、サッチングによるダメージからの回復が非常に早いためです。
- 注意点:真夏(7月~8月)は芝生が夏バテで弱っているため、強い刺激となるサッチングは避けるべきです。また、休眠期に入る冬(11月以降)に行うと、回復できずにそのまま枯れてしまうリスクがあります。
- ケンタッキーブルーグラスなど「寒地型芝生」の最適な時期
- ベストシーズン:春(3月~5月)と秋(9月~11月)
- 理由:暖地型と同様、生育期に行うのが鉄則です。特に気温が涼しくなる秋は、寒地型芝生が最も元気になる季節です。
- 注意点:夏の高温多湿に弱いため、夏場の作業は絶対に避けましょう。
やりすぎ防止!サッチングの適切な頻度と判断基準
- 基本は「年に1~2回」
- 一般的に、サッチングの頻度は年に1回、多くても2回が目安です。毎年必ず行う必要はなく、芝生の状態を見て判断することが「やりすぎ」を防ぐ最大のコツです。
- サッチの厚みで判断する方法
- 指で芝生の根元をかき分けて、サッチ層の厚さを確認します。この厚さが5mm~1cm程度溜まっていたら、サッチング実行のサインです。それ以下であれば、無理に行う必要はありません。
- 【根拠データ】
- 大手種苗メーカーであるタキイ種苗株式会社のウェブサイト「タキイの園芸百科」においても、高麗芝の手入れとしてサッチング(サッチの除去)は春の更新作業の一環として推奨されており、生育が旺盛になる時期に行うことの重要性が示唆されています。これは、作業によるダメージを芝生自身の生命力で速やかに回復させるためです。
もう失敗しない!芝生を傷めないサッチングの正しいやり方

適切な時期と頻度を理解したら、いよいよ実践です。ここでは、道具選びから具体的な作業手順、そして最も重要な「やりすぎない」ための力加減のコツまでを詳しく解説します。
手作業 vs 機械 どう違う?道具別サッチングのコツ
- 熊手・レーキを使った手作業
- やり方: 芝生の表面を優しく、なでるように一定方向に引っ掻きます。決して、地面をえぐるように力を入れてはいけません。縦方向が終わったら、次は横方向と、方向を変えて行うと効率的です。
- メリット: ・安価で手軽に始められる ・力の加減がしやすく、やりすぎを防ぎやすい ・狭い範囲や障害物の周りも丁寧に作業できる
- デメリット: ・広い庭では時間と体力が非常にかかる ・均一に作業するのが難しい
- 電動サッチャー(ローンコーム)を使った機械作業
- やり方: 芝刈り機と同じ要領で、ゆっくりと押して進みます。刃の高さ設定が非常に重要で、最初は最も高い設定から試し、芝生を傷つけずサッチだけが取れる最適な高さに調整します。
- メリット: ・作業が圧倒的にスピーディーで楽 ・広範囲を均一に処理できる
- デメリット: ・高価で収納場所が必要 ・設定を間違えると、一気に芝生を傷つけ「やりすぎ」状態になるリスクがある
【商品紹介】作業が捗る!おすすめサッチングツール
京セラ(旧リョービ)「電動サッチングマシン LM-2810」
パワフルな電動式で、広範囲のサッチを効率的にかき集めます。刃の高さ調整機能もついているため、「やりすぎ」リスクを低減できます。
メリット: 作業効率が劇的に向上する。刈りカスをキャッチするグラスキャッチャー付きで後片付けも楽。
デメリット: 価格が比較的高価。使用時の音が気になる場合がある。保管場所を確保する必要がある。
作業後が肝心!芝生の回復力を高めるアフターケア
サッチングは「外科手術」のようなもの。術後のケアが芝生の未来を決めます。
掃除:
取り除いたサッチは、病原菌の温床になるため、必ず綺麗に集めて処分します。
目土・目砂入れ
作業によってできた地面の凹凸を均し、根を保護するために、薄く目土または目砂を撒きます。
水やり
作業後は乾燥しやすいため、たっぷりと水を与え、土壌と根を落ち着かせます。
施肥
すぐに肥料を与えると刺激が強すぎるため、1~2週間ほど様子を見て、芝生が回復し始めたタイミングで与えるのが効果的です。
まとめ

今回は、芝生のサッチングにおける「やりすぎ」問題と、それを防ぐための正しい知識について詳しく解説しました。最後に、本記事の重要なポイントを振り返りましょう。
- サッチングは芝生の健康に不可欠な作業ですが、「やりすぎ」は芝生を傷める最大の原因になります。作業後に土が露出しすぎるのはやりすぎのサインです。
- サッチングの最適な時期は、芝生の回復力が高い生育期。暖地型芝は「春(4~6月上旬)・秋(9月)」、寒地型芝は「春(3~5月)・秋(9~11月)」に行いましょう。
- 頻度は「年に1~2回」が目安です。毎年必ず行うのではなく、芝生の根元のサッチが5mm以上溜まっているかを確認して判断するのが「やりすぎ」を防ぐコツです。
- 道具は手動でも機械でもOKですが、どちらも「優しく、表面をなでるように」が基本。特に機械を使う際は、刃の高さ設定に細心の注意を払いましょう。
- 作業後は必ず、①サッチの掃除、②目土入れ、③水やり、④適切なタイミングでの施肥、というアフターケアをセットで行うことが、美しい芝生への最短ルートです。
美しい芝生への道は、一日にしてならず。しかし、正しい知識を持って一つひとつの作業を丁寧に行えば、芝生は必ずその愛情に応えてくれます。
まずはご自宅の芝生をしゃがんでじっくりと観察し、サッチの状態を確認することから始めてみませんか?この記事を参考に、自信を持ってサッチングに挑戦し、今年こそ最高のコンディションで芝生のシーズンを迎えてください。
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